19世紀後半 ジャポニズム

19世紀後半は、19世紀前半からすでに始まっていた日本の文物に対する熱狂的な趣味「ジャポニズム」が鎖国後の開国、正式貿易の開始とともに花開いた時代であった。特に、産業革命による近代化真っ只中のパリを中心に活発だった印象派と呼ばれる芸術家たちに、熱狂的に迎えられ、大きな影響を与えていた。また、東洋の茶や骨董を売る店で、この頃から日本のものをも扱うようになっていた。
 では、どのような日本のものが欧州に流入していたのか。広く知られているのは、浮世絵である。その影響は、特に印象派の絵画に著しい。では、その他の日本の美術・工芸品はどうであろうか。

「JAPAN」と呼ばれた漆器や、さまざまな美術工芸品が、どちらかというと室内の様子として、背景的に描かれたのに対し、団扇を手にした女性の絵が多いことに気づく。ヨーロッパにも存在した扇子は、中世よりしばしば西洋絵画の中に登場したが、扇子と違い、団扇は日本独特のものである。過去より現代まで、団扇がこれほど西洋絵画の中に登場したことはない。